みなさん、こんにちは! ビジネス日本語教師のひとみまよと申します。
生教材とは、教育用に加工されていない、実際に社会で使用されているものを指します。例えば看板やメニュー、アナウンスやドラマなどは全て生教材です。生教材の使用にはどんな長所と短所があるでしょうか。
長所1. 教材作成の時間短縮
日本に住んでいる場合、街なかの「釣りをしないでください」「自転車はおりて下さい」という看板を撮るだけでもすぐに授業で使えます。
ほんの1枚の写真、例えばショッピングモールのフロアガイドの写真でも、学習者が興味を持ってくれる場合は20分ぐらいの授業時間を使えることもあります。
長所2. ゴール地点と現在地のズレが分かる
カフェのメニューをN3レベルの学習者に見せた時の話です。「わぁ〜!美味しそう!!」と彼女の表情がパッと明るくなりました。レッスンの最後には「私は、ひらがなと漢字は大切だけれど、カタカナはあまり大事じゃないと思い込んでいた。けれどこうして街中の写真やメニューを見ると、カタカナが本当にたくさん使われているということが分かって、もっとスラスラ読めるようにならなきゃいけないと思った」とのことでした。
他にも、N1を持っている中華系の学習者さんであっても、日本で実際に服を買いに行ったら店員の話している言葉が全く分からず落ち込んでしまった、という話も聞きました。生教材とはまた違ってきますが、「実際に日本で話されている話し方」を意識してロールプレイを行うことも大切ですね。
長所3. 気持ちがシェアできる
生教材が難しすぎて落ち込んでしまった学習者さんには「私も英語を何十年も勉強しているのに英語の映画は字幕がないとほとんど分からない」など、自分も学習者であり、気持ちが分かるということを素直に打ち明けるようにしています。学習者に言語学習のアドバイスを求めるなどすれば、もう1つのアクティビティも行えます。
長所4. 学習者の生活の悩みを解決できる
私はロシアに住んでいたことがあります。ロシア語は一応中級レベルだったのですが、スーパーに行っても食料品選びに時間がかかるし、薬や化粧品の効能の説明は全然分からないし、かといってグーグル翻訳を使って商品について長時間調べるのも怪しまれるのではないかと思い、いつも買い物はソワソワしながら行う、不安な時間でした。生教材の使用は生活者の悩みの解決に直結するものだと考えます。
短所1. 著作権の問題がある
有料のオンラインストリーミングサービスで動画を見せる場合は、学習者もそのサービスに加入していることを確認する必要があります。
短所2. 難しすぎる
一番の短所は、学習者のレベルにあった生教材を見つけるのが難しいことでしょう。公園や図書館など子どもが行くことも多い場所は、注意書きにもふりがなが振ってあることも多いです。
教材の使用方法も大切で、メニューの生教材を使うとしても、「全部を音読してもらう」のようなアクティビティをしてしまうと、漢字が多すぎて学習者がつまずく時間の方が長くなってしまいます。
実際にカフェにいることを想定し「注文が決まったら呼んでください」という活動にすれば、学習者にとっても楽しめる活動になるでしょう。
映画やドラマも同じで、セリフの一つひとつを聞き取る作業をしてしまい、大失敗した経験があります。短いの会話のやりとりを見せて、「今何が起こったのか」を確認する作業だと学習者もストーリーを楽しめるかと思います。
短所3. 成果が見えにくい
生教材の使用はインプットの授業(読む、聞く)が多くなるので、学習者としては「授業の成果」となるものが得にくくなってしまいます。しかし、言語習得には何よりもまずインプットが大切だと言われています。
生教材の使用は時間がかかりますが、自然な日本語習得への近道であることを学習者に共有し、安心してもらいましょう。
まとめ
生教材は、実際の仕様の場面に即した授業を行えばとても楽しい授業ができます。生教材を使い、学習者さんに、ゴールに一歩近づいてもらいましょう!お読み頂き、ありがとうございました。
- Teacher Mayo
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